研究課題
これまでに5-S-GAD部分構造体および類縁化合物を数種類合成し、ラジカル形成作用とラジカルスカベンジャー活性を検討した。また、鶏胚漿尿膜における血管新生に対する作用、ヒドロコルチゾンによって誘発される鶏胚白内障に対する作用、RANKL刺激による破骨細胞分化に対する作用を検討した。その結果、5-S-GAD部分構造体であるβ-Alanyldopaではラジカル形成作用およびラジカルスカベンジャー活性が検出されるものの、β-Alanyltyrosineでは全く活性が失われた。従って、これらの活性にはドーパ構造が必須であることが明らかになった。また、β-Alanyldopaは血管新生抑制作用を示さなかったが、5-S-GADより1/5程度の白内障発症抑制作用および破骨細胞分化抑制作用を示し、5-S-GADの活性に必要な最低構造であると考えられた。Dopaおよび5-S-Glutathionyl-dopaは5-S-GADと同程度の強いラジカルスカベンジャー活性を有するものの、安定なラジカル形成能は見られなかった。また、血管新生抑制作用、白内障発症抑制作用、破骨細胞分化抑制作用は検出されなかった。これらの結果より、ラジカルスカベンジャー作用と血管新生抑制作用は相関しないことが分かった。また、5-S-GADと構造は異なるが、安定なラジカル形成作用と白内障発症抑制作用を有するTEMPOLの血管新生抑制作用を検討した。その結果、5-S-GADの1/30程度の弱い活性が見いだされた。TEMPOLの白内障発症抑制作用は5-S-GADの1/30程度である(Akiyama N,Free Radic Biol Med,2009)ことを考えると、同様なメカニズムで血管新生抑制作用している可能性が考えられた。以上の結果から、血管新生抑制作用とラジカルスカベンジャー活性の相関は見いだされなかったが、比較的安定なラジカル形成をする化合物は血管新生抑制作用を有することが明らかになった。また、白内障発症抑制作用には明らかにβ-Alanyldopaの構造が重要であり、安定なラジカル形成作用が関与している可能性が見いだされた。
2: おおむね順調に進展している
研究目的として掲げた血管新生抑制作用とラジカルスカベンジャー活性の相関は見いだされなかったが、比較的安定なラジカル形成をする化合物は血管新生抑制作用を有することを明らかにした。
昆虫生理活性物質5-S-GADは現在動物の白内障発症抑制薬として臨床試験を行っている。現在までに複数の有効症例報告を得ている。今後、製薬企業の協力を得て、新薬開発研究を進めて行く予定である。
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Clinical Immunology and Allergology
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Biochem Biophys Res Commun
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