研究概要 |
本研究の目的は,共感的対話(対話者の共感性や受容性によって,対話者が自律的に新しい視点を獲得するなどといった変化を成し遂げられる対話)における,認知的プロセスをモデル化することである.本研究では特に,心理臨床対話を例として検討を進めている. 平成20年度は,本研究の計画の最初の段階である(A)聴き手の発話形式を指標とした検討,および(B)聴き手と話し手の身体動作の同調性を指標とした検討を,主として進めることに加え,(C)カウンセラーの記憶に関する検討を行うことにより,モデルの構築に近づいている. たとえば(A)では,心理臨床対話や日常的な悩み相談の対話において,聴き手がいかに応答するか,そしてその方法が時系列的にいかに変化するかを明らかにするため.話者交替時の聴き手の発話形式(たとえば話者交替の初めに置かれる相槌的表現)に関する分析を行った.結果から,高評価カウンセリングにおけるカウンセラーの発話冒頭形式は,2事例間で共通するパターンで時系列的に変化することが示された.さらにそのパターンは,後述の身体動作の同調性における時系列的パターンに対応することが認められた.これらの結果を踏まえ,カウンセラーによるクライエント理解の深化やクライエントの変化などのプロセスに関係する,カウンセリング対話の特有の時間的構造に関する考察を行った.
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