本研究課題では社会性昆虫に内在する自己組織化機構に着目し、これが繁殖闘争に与える影響を解明することを目的とした。これをするために4つの実験計画をたて、2年間で完遂する予定である。トゲオオハリアリで見られるコロニーサイズに反応したパトロール行動が、卵巣発達ワーカーとの接触頻度に影響するのかどうか調べるために、人為的に卵巣を発達させたワーカーを比率を変えて導入し、女王のパトロール時間、頻度を調査した。その結果、女王のパトロール行動の頻度と時間は卵巣発達ワーカーの導入比率が高くなるほど増加した。これは、卵巣発達ワーカーとの接触が女王のパトロール行動に影響を与えていることを示唆している。卵巣発達ワーカー数はコロニーサイズと正の相関があるため、女王のパトロール行動のコロニーサイズ変化は(コロニーサイズと正の相関)、卵巣発達ワーカー数と関係していると考えられる。この結果は、社会性昆虫で見られるコロニーサイズに関係した行動パターンの進化を考える上で重要である。なぜなら、コロニーサイズを反映する個体数以外の指標は分かっておらず、また、その指標に関連した行動の変化を初めて実験的に証明した研究だからである
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