実空間上にユビキタス情報基盤を構築する上でまず初めに解決しなければならない問題として、実空間に展開された多数のデバイスまたはそのような空間におけるモバイルデバイスの位置情報・デバイス間の距離を取得することが挙げられる。特に移動体の位置情報は歩行者用ナビゲーションなどさまざまな応用が期待されており、ユビキタスコンピューティングを構成する重要な要素と考えられている。 本研究ではアクティブタグ間のみの通信からタグ間の距離を推定する手法を考案し評価した。単純なハードウェアから構成されるタグを用いた通信の場合、タグ間の測距のために利用できる指標として受信信号強度が挙げられる。しかし実環境では通信環境によって受信信号強度にばらつきがみられるため、受信信号強度を用いた測距は精度が低い。そこで本研究では受信信号強度を統計的に処理する手法に着目した。コンピューティング能力が低いハードウェアでは高度な計算はできない。また移動体の測距では実時間性が求められるため、大量のサンプルが必要なカルマンフィルタやパーティクルフィルタなども利用できない。これらのことから、本研究では単純な統計量を用いて受信信号強度を処理する手法をいくつか提案し、それらを実装したタグを実環境で運用して精度および実時間性を評価した。またハードウェアで観測される受信信号強度は正規的に分布していることに着目し、パケット交換の回数を増やすことによって測距精度の向上を図った。これらの結果、アドホック通信のみを利用した場合において、測距の誤差を4m以内に抑えることを実現した。
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