研究概要 |
昨年度にプロトタイプを構築した「板木閲覧システム」のチューニングを行いつつ、年度を通してメタ・データの充実を図り、2010年2月に無料web公開を開始した。これについて、板木研究の進展に寄与することが期待されるとして、新聞各紙に報道がなされた。またこの活動に則して、板木研究の目的と意義およびデジタル・アーカイブ構築の手法に関する論文を公刊した。10月には、学術資料として板木を大量に扱えるようになった成果として、板木の基本構造に関する学会発表を行った。 10月~12月に、板木関連資料として、科学研究費補助金により収集した板本、および奈良大学図書館・奈良大学文学部永井一彰研究室・永井一彰氏個人所蔵板本のデジタル化を行い、約20,000カットのデジタル・アーカイブを構築した。これらを「書籍閲覧システム」(立命館大学アート・リサーチセンター)を通じて即座にweb公開を開始している。また合わせて、竹苞書楼が所蔵する出版記録のデジタル化を行い、出版記録データベース構築の基礎を固めた。結果、板木・板本・出版記録の3つを組み合わせた出版研究実践が可能となり、事例として『賞奇軒墨竹譜』の刊行経緯を考察し、論文を公刊した。上述の成果等により、板木資料が出版研究の強力な基盤となり得ることを証明した。 3月には株式会社法蔵館の板木蔵について、奈良大学文学部・永井一彰教授と共同で、第1回目の調査を行い、数千~1万枚の板木現存を確認、今後行う予定の悉皆調査・デジタル化・データベース構築の基礎を構築した。
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