当年度は、板木デジタルアーカイブと、2009年度に構築した板本デジタルアーカイブの連携に取り組み、公開されているシステムに実装を行い、研究ツールとしての付加価値を高めた。 奈良大学に板木が所蔵されている享保十七年版「十巻章」の諸本調査のため、7月に真言宗智山派智積院智山書庫所蔵本の調査を行った。奈良大学所蔵板木は、半丁ごとに板木が寸断された状態で伝存しているが、袋綴じと粘葉装の板本を摺刷できるよう、元4丁張の板木を半丁毎に分断したものであることが判明した。 板木が現存する板本を対象に匡郭高の全丁採寸調査を行い、匡郭高低差および板木の構成に相関関係を見出し、かつ高低差発生の原因が木材収縮に起因することを明らかにした。 昨年度デジタル化を行った出版記録の記述内容について検証を進めた。結果、異なる記録間で情報の出入りや齟齬があり、可能な限り全ての記録を参照して初めて確定的な事実が得られるとの結論に至った。 当年度は、2009年度以前の成果報告に上記の研究成果を加え、博士学位論文「板木デジタルアーカイブ構築と近世出版研究への活用」の執筆に注力し、博士(文学)の学位を取得した。
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