Affirmative Action(AA)には以下の問題がある。(1)AAを正当化する際、憲法の平等保護条項が如何に解釈されるのか。(2)AAにより地位を獲得できなかった者は平等に対する権利を害されたと主張するが、それは如何なる権利か。(3)AAに適用される審査基準は何か。(4)憲法上許容されるAAの目的と手段とは何か。 以上の問題を解決することが研究課題である。まず、(1)の問題につき、「AAと平等保護」東北法学31号107頁で考察し、アメリカ合衆国憲法の平等条項の解釈との比較を通じて、日本国憲法一四条の平等の一つの意味が、生まれや社会的偶然を理由に、スティグマを課されないことにあることを明らかにした。(2)の問題を解明する一つの手がかりとして、「AAと能力主義」GEMCジャーナル1号138頁(2009年3月)において、AAと能力主義の関係について考察した。AAは能力のある者が地位を獲得する権利があり、能力の劣る者が地位を獲得することは平等に反すると批判される。しかし、既存の基準だけでなく、人種や性別を能力として捉えることでこの批判を回避できること、志願者は既存の基準のみで審査される権利を有しないことを明らかにした。 (4)の問題にうち、憲法上許容される目的は何かという問題につき、「AAの正当化理由(一)・(二)〜過去向きのAAと将来志向のAA〜」東北法学33号49頁、同34号で考察した。アメリカの判例と学説を考察すると、AAには過去の差別の救済を目的とするものと将来における利益の達成を目的とするものがあり、後者は理論的問題点から正当化が困難であった。双方とも過去の差別の救済や差別発生の防止といったように差別を意識しており、日本国憲法におけるAAの正当化理由もそうあるべきことを明らかにした。
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