研究課題/領域番号 |
09041004
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
牛島 巌 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (10091886)
|
研究分担者 |
ABAYA Euraci フィリピン大学, 人文科学部, 助教授
川田 牧人 中京大学, 社会学部, 講師 (30260110)
亘 純吉 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (60099546)
矢野 敬生 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (40200555)
関 一敏 九州大学, 人間環境学研究科, 助教授 (50179321)
|
キーワード | フィリピン / ビサヤ内海域 / 家内工業 / 二者関係 / 呪医 / 知識と技術 / 伝承経路 |
研究概要 |
本研究の目的は、フィリピン・ビサヤ内海域において、諸職、商人、呪的職能者が家内的に伝承してきた技術と知識を対象とし、そのお実践的運用と自らの配置を生かした生活戦略の実態を解明するものである。 ビサヤ地域には干物製造、素焼き品生産、鍛冶業などが家内生産されている。こうした小規模な生産様式は、比較的少ない資本での市場参入が簡単であり、一定の雇用を生み出すという効果が期待できる。しかし、運転資金は仲買商人に依存しなければならないケースが多く、市場セクターから生産セクターに至る資金の流れは、取引相手との二者関係によって行なわれる。そのため、ビサヤ地域の家内工業は市場セクターの統制のもとでのみ展開されている。 また、フィリピンのシキホール島では、伝統治療師(呪医)の民俗的知識と技術の伝承経路をたどる調査を行なった。呪医の主たる活動が病治しと薬剤集めにあり、いずれの活動についても、日常的な学習による習得が可能であるため、同居親族内で伝承されるという傾向が浮かび上がる。元来、そうした日常的な学習とは関わりのない、夢見や神示という非経験的な知識の伝承についても、同じことが指摘できる。しかし他方で、呪医の一部が携わる呪いについては、逆に顕著な伝承経路がいまだ見られないなど、調査すべき課題は多い。今後、セブ、パナイ、ミンダナオ、ネグロス各島の類似現象をめぐる文献収集を行ないながら、ビサヤ地域内での比較を試みる必要がある。
|