1997年の夏、日本から三名の研究者がハンガリーへ出かけて調査をした。南塚はセゲド市郊外のボルダーニ村周辺、戸谷はケチケメート市郊外のセントキラーイ村周辺、渡辺はベ-ケ-シュチャバ市郊外のコンドロシュ町周辺のタニャを調査した。調査方法は、それぞれの場所で20軒のタニャを選んでインタヴユ-を行う形を取った。20軒は、経営規模、立地、世代、作物種類等を勘案して、バランスをとった。インタヴユ-は、あらかじめ日本で準備したアンケート項目にそって、三カ所とも同じ形式で行った。主な質問事項は、タニャ住人の個人的データのほか、タニャの歴史、経営状態、その問題点、また、タニャ住人の歴史意識などに関するものである。さしあたり、見えてきた傾向として、タニャの3分の1は没落型、3分の1は停滞型、3分の1弱がファーマ-型として発展の可能性を持つものと言うことができる。そのさい、以下に作物の多角化が勧められているかが鍵になっている。一方、歴史的意識としては、1989年以後、けっしてタニャは優遇されておらず、むしろ1960〜70年代の社会主義時代への評価は高いものがあること、また戦前の地主時代への愛着はほとんどないことが、判明した。
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