本年度も昨年度に引き続いて、ハンガリーの3つの地域のタニャの調査を実施した。すなわち、南塚がセゲド地域、戸谷がケチケメート地域、そして研究協力者の渡辺がコンドロシュ地域のタニャ調査を行った。本年度は、昨年度の20ケースの調査をもとに、各地域で1、2のタニャを選択して、そのタニャの歴史を詳しく調べることと、各タニャ地域の地域史を調査することを方針とした。これらの歴史的調査により、特に、1948年〜1953年頃の農村の社会主義的改造の持った意義を明らかにすることができた。 また、調査期間中に、ハンガリーの研究分担者であるサボー氏とチャタリー氏のほか、タニャ研究の専門家であるティマール・ユディト氏、バルタ・ヤーノシュ氏を交えて、タニャの歴史的変化を全国的にいかに認識するかをめぐって討論会を行い、さらに、次年度末に刊行予定の報告書の編集方針を討論した。 一方、本年度はハンガリーの研究分担者であるサボー氏とチャタリー氏を日本に招へいし、富山県砺波市周辺の散居村の調査を行った。砺波市では、同市の散村研究所の所長と教材形成過程、近代化の中での散村の変化、散村に住む農民の生活様式や意識について、日本とハンガリーの比較を討論した。この間、砺波市のいくつかの代表的な散居村の見学も行い、インタビューも行った。 この日本とハンガリーの比較を論ずる中で、教材というのは、この両国に限れるわけではなく、さらに、イタリア、フランス、ドイツなどにも類似の教材があり、それらを視野に入れた上で、日本とハンガリーの散村比較を行う必要があることが確認された。また、次年度に刊行予定の報告書には、砺波の散居村についての章を設けることも確認された。
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