研究課題
国際学術研究
タイで1996年に代表者が発見した銅鼓2点の調査、実測、写真撮影を行い、ヘーガー1式銅鼓の重要資料を得た。それに基づきメコン流域に分布する銅鼓との比較研究を行った。メコン流域の銅鼓はタイ中部の銅鼓に比べ大形であり、メコン流域の社会集団の経済力との差を推定させる。コンケン県、ウドンタニ県、ノンカイ県ではメコンh中流域の金属器資料の調査と、現地の考古遺跡の踏査を実施した。ベトナム南部では、メコン下流域での文明化に至る過程を研究するため、丘陵地帯であるソンベ川流域の考古遺跡の踏査と出土遺物の調査を行い、前3世紀以降のこの地域の歴史的意味を研究した。前2千年紀末からソンベ流域の丘陵地帯に居住が展開し、丘陵と丘陵の間の谷が水稲栽培地として開発されていったことがわかった。前3世紀頃にはこれら丘陵地帯に金属器が存在するが、従来ベトナムの研究者が主張してきたのとは違って、青銅器は実用に耐えないきわめて儀器的なもので、生産での意味は少なかったことが今回の調査でわかった。ソンベ川流域と対照的なメコン流域の低湿地地帯では、バンコ・ドン、バンコ・タイ両河川の湿地での居住の実態とホ-チミン市のマングローブ地域での前2世紀の居住実態を調査した。マングローブ域のゾンカーヴォ遺跡では居住に不適な環境にもかかわらず、前2世紀の中国南部で生産された土器が大量にあり、前2世紀頃には中国南部からの人間集団の来航があったこと、さらにインド産玉類の出土から後1世紀にはこの地域へのインドからの影響が及んだことが今回の調査で明らかになった。