研究課題/領域番号 |
09041027
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
松園 万亀雄 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00061408)
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研究分担者 |
小田 亮 成城大学, 文芸学部, 教授 (50214143)
小馬 徹 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (40145347)
中林 伸浩 金沢大学, 文学部, 教授 (30019848)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | 社会・文化変化 / 国民意識 / 自助組織 / 女性自助組織 / 部族主義 / キリスト教 / アフリカ独立教会 / ケニア |
研究概要 |
本研究では3ヵ年にわたり、ケニアの6社会(グシイ、イスハ、キプシギス、クリア、ルオ、ベーレ)において、国家主導の国民形成とそれにともなう一律的な国家政策の導入が,国内の各民族集団社会にどのような緊張関係を生じさせ、どのような適応過程が現れているかを調査研究した。具体的な成果としての知見の一部は以下のようである。 1. 1980年代以降、農耕地域で展開されてきた女性中心の自助組織は、近年政府施策の受入れ機関として機能する傾向があり、広域化・多様化の様相をみせている。 2. 伝統的な男女差別や役割区分に基づくジェンダー関係は、近代的な避妊法の普及や、あらたに興った観光客用物産の地場産業、あるいは近年の多様な住民自助組織においても明確に現れている。固定的なジェンダー関係を解消するための法整備も不十分なままである。 3. しかしながら、女性を中心として組織された自発的集団は、男性中心のそれに比較してメンバシップの点でははるかに開放的であり、運営もより民主的である事例の多いことがわかった。 4. 多党制化の結果、住民の政治的関心が高くなったが、同時に「部族主義」が表面化する傾向も生じており、国民意識の形成が阻害される側面も観察される。 5. キリスト教が土着化されていく過程が各地で観察され、教会運営や宗教儀礼の解釈には独特の地域的特性がある。 6. 地域の長老裁判は公式には国家の司法組織の枠外にあるが、慣習法による裁定という面では国家裁判所の補助機関として重要な役割を果たしている。 本研究の成果は文化人類学にとって挑戦的な内容を含んでおり、「国民国家」「国民文化」「アフリカ化」の定義や国家と民族の関係について再考を迫るものである。今後はさらに開発計画やNGOの活動を視野に入れて近年の社会・文化変化を追及する必要がある。
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