研究概要 |
ブルガリア・トラキア平野中に所在する先史遺跡テル・テャドヴォの平成9年度発掘調査により得られた知見を以下に記す: 1.前回までの調査で露出していた青銅器時代の文化層を掘り下げ,柱穴列の並ぶ長方形の住居址をほぼ一軒調査した。内部に炉を備え,少なくとも2回床面の貼り替えが行われていた。ブルガリアにおいて青銅器時代住居の完掘例は少なく,貴重な資料を付け加えることができた。 2.住居,カマドの占地には層をまたがって共通性があり,青銅器時代を通じて集落の基本的形制に大きな変化がなかったことが確認できた。 3.カマド燃焼面上で検出された羊形土偶は,カマドを対象とする儀礼の存在を予想させるものである。 4.陸カメ背甲を厚手粗製土器中に収めて土中に埋置した遺構が検出された。以前検出された牛頭埋置遺構とともに当該期における何らかの儀礼を反映したものと思われる。 調査区の一部について銅石時代まで掘り下げ,その間の土層堆積図を作成した。その結果青銅器時代と先行する銅石時代の間には漸移層が認められ,従来の有力な仮説であった民族移動を伴う文化の荒廃と急激な転換を示す所見は得られなかった。本層に対する次年度以降の調査が期待されるところである。 出土炭化物資料の年代測定を行った。
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