研究課題/領域番号 |
09041042
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研究種目 |
国際学術研究
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応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
大塚 和義 国立民族学博物館, 第一研究部, 教授 (50110078)
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研究分担者 |
小杉 康 北海道大学, 文学部, 助教授 (10211898)
中川 裕 千葉大学, 文学部, 助教授 (50172276)
池谷 和信 国立民族学博物館, 第一研究部, 助手 (10211723)
岸上 伸啓 国立民族学博物館, 第一研究部, 助教授 (60214772)
佐々木 史郎 国立民族学博物館, 第四研究部, 助教授 (70178648)
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キーワード | 交易 / 北太平洋 / 先住民 / 毛皮交易 / 社会変化 / 山丹交易 |
研究概要 |
本年度は、ロシア・アムール川流域、ロシアのチュコト半島、カナダのバンクーバー島の3地域に調査隊を派遣し、次のような成果を得た。 1.アムール川流域の先住民社会における交易、ことに山丹交易を中心に、間宮林蔵をはじめ日本や中国・ロシアの記録に記述されている交易品の調査を実施した。予想以上に現物資料を探し出すことができ、物流の実態解明についての基礎資料を得ることができた。ことに大量の日本製に漆器や鉄鍋晶などの存在を認識できたことは大きな成果である。これら現物資料について詳細な実測図の作成と写真撮影を行うと同時に、伝承を古老から聞き取り、記録した。現在、これらのデータについて分析・検討中であるが、日本・中国・ロシア三国の国家の支配・影響がおよぶ以前に、アムール川地域の先住民間の交易が活発に展開されていた実態を初めて「もの」を通して明らかにできたこと、当地域の先住民交易チャンネルを列強三国が奪うかたちで彼らのもとに進出し、支配下においていった過程を把握できたことが、本調査の成果であると考えている。 2.ロシア国チュコト自治管区チャウンスキー地区のトレグ-チ村とヤノラナイ村の古老から聞き取りをおこなうと同時に、かつての交易によって得られたといわれる物の計測をおこなった。その結果、1930年代から1940年代にかけて、チュクチはアメリカ人との交易を通して、鉄や鉄鍋、やかんなどを入手してることが明らかになった。 3.カナダ国バンクーバー晶地域におけるカナダ北西海岸先住民の交易品を調査した。17世紀半ばに欧米人との毛皮交易が開始される以前から、異なる地域の先住民間で貝殻、自然銅などいろいろな物資がさかんに交易されていたことが判明した。さらに、ラッコ皮を主な交易晶とした毛皮交易は、先住民に莫大な富と、鉄砲、鉄製手斧など効率のよい道具をもたらしたために、18世紀以降ポトラッチ儀礼やト-テムポールの規模が大きくなったことを再確認できた。
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