研究課題/領域番号 |
09041043
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研究種目 |
国際学術研究
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応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
野村 雅一 国立民族学博物館, 第3研究部, 教授 (60142014)
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研究分担者 |
山口 惠里子 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 講師 (20292493)
藤田 隆則 大阪女子国際大学, 人間科学部, 助教授 (20209050)
卜田 隆嗣 島根大学, 教育学部, 助教授 (40202113)
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キーワード | 身体 / コミュニケーション / 身体接触 / 身体共鳴 / あいさつ / 椅子 |
研究概要 |
身体接触と身体共鳴の比較検討を目的とする3年計画の本研究の初年度にあたる本年は、まず人と人の出会いの際のあいさつ行動の観察と記録、共在する親しい者同士の姿勢反響や動作の共鳴を中心に、各地で調査をおこなった。 代表者の野村はギリシャと南イタリアで戸外(冬期には屋内)でのあいさつと談話の場面における立位と着座の意味がまったくことなることに着目し、ヴィデオ記録をとったほか、成人の姿勢反響や幼児の身体が周囲の成人に共鳴してうごきだす事例を記録することができた。 マレーシアのサワラクで調査した卜田は、ロングハウスで、訪問者が主人たちと視線もあわさず、黙したままタバコが差しだされるのをじっとまつ伝統的なあいさつ行動を観察した。また、クリンドゥとよばれる歌唱の場において、主唱者とまわりのほかの歌い手、さらに聴衆のからだの揺れが同期する例を採集した。 藤田はフィリピンのマニラと山岳部のふたつの集落を比較調査し、都市部ではmanoといわれる接触型のあいさつがおこなわれるのに対して、山地でのあいさつの不在を確認した。また、地域による人びとの腰のおこし方の差異や、ゴングのアンサンブルであるガンサの奏演中の音や動作の共鳴現象を検証した。 山口はギリシャ、イタリア、キプロスで身体空間がいかに構成されるかを調査した・とくに、北ギリシャで、バシとよばれるオリエント的な低い坐での半臥半坐の姿勢がギリシャ人の身体の「受動的能動性」と対応することをみいだしたのは重要な発見である。さらに、キプロスでおこなった親しい人の記憶の残像であるすわられない椅子についての調査も大きな収穫だった。 以上のように、初年度は当初の予定どおりとどこおりなく調査をおこない、身体性について貴重な資料を収集することができた。今後、観察データを比較し、考察を深めるとともに、その成果は随時発表していくつもりである。
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