研究課題/領域番号 |
09041053
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神野 直彦 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20145767)
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研究分担者 |
林 家彬 中国国務院発展研究センター, 発展予測研究部, 室長
和泉 潤 朝日大学, 経営学部, 教授 (90110725)
仁連 孝昭 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60127686)
田近 栄治 一橋大学, 経済学部, 教授 (10179723)
石 弘光 一橋大学, 経済学部, 教授 (60017530)
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キーワード | 中国 / 地方財政 / 分税制 / 少数民族 / 財政調整 / 都市財政 / 財政関係 / 災害財政 |
研究概要 |
昨年度の調査研究の成果と反省を踏まえ、今年度は新彊維吾爾自治区、湖北省、雲南省という三つの省を調査対象に選び、中国の地方財政の調査を実施した。新彊維吾爾自治区と雲南省は昨年度の湖南省に引き続き、少数民族地域の地方財政の調査という趣旨で取り上げ、湖北省は今年度に長江大洪水が発生したことから、急遽、大災害に対する地方財政の対応を調査するという趣旨から調査を実施することにした。 少数民族地域である新彊維吾爾自治区、雲南省の調査では、分税制によって地方財政が強化されたと評価されていることがわかった。新彊維吾爾自治区の石油、湖北省の煙草に象徴されるように、少数民族地域でありながら、財政力が豊かであることが、その大きな理由と考えられる。しかし、分税制が財政インセンティブを重視したためのデメリットも大きい。というのも、分税制のもとでは省と基礎自治体との財政ルールが明確でないこともあって、省内における財政力格差が、いずれの省でも進み、それが深刻化しているからである。 大災害の被災地である湖北省では、日本と同様に災害対策組織を設け対応していた。しかし、中国の地方財政には臨時支出に対応する財政の弾力性の乏しいことが露呈されていた。省財政の財政支出に占める人件費の比重が90%であるため、日本の概念を使えば、経常収支比率は異常に高い。そのため災害による臨時的支出は事実上、中央政府からの援助に仰がざるをえない。しかし、中央政府の財政も弾力性に欠け、結局、銀行融資などの借入れに依存せざるをえないのが現状である。 前年度および今年度の調査で中国の西部、南部の少数民族地域の地方財政は調査することができたので、来年度は北部に焦点を絞り調査を実施したい。
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