研究課題/領域番号 |
09041059
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
内藤 正典 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (10155640)
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研究分担者 |
私市 正年 上智大学, アジア文化研究所, 教授 (80177807)
長谷 安朗 九州工業大学, 工学部, 助教授 (90212141)
矢澤 修次郎 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (20055320)
林 徹 東京大学, 大学院・人文・社会系研究科, 教授 (20173015)
小杉 泰 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (50170254)
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キーワード | イスラーム / イスラーム復興運動 / ドイツ / オランダ / イギリス / フランス / トルコ |
研究概要 |
ドイツ、イギリス、フランス等、西ヨーロッパ諸国は、1960年代から多くの移民労働者を受け入れてきた。彼らの多くは現在も定住している。トルコ、マグレブ諸国、パキスタンなどからの移民は、イスラーム教徒が多く、彼らのイスラーム復興の動きは1980年代から顕著になってきた。本研究では、明らかになった。復興運動の実態を解明し、その原因と将来の展望について検討を行った。 その結果、ドイツにおいては、移民政策のうちに制度的差別を含むこと、とりわけキリスト教徒とユダヤ教徒に対して承認されている宗教教育の権利がイスラーム教徒に承認されていないことが、イスラーム教徒としての覚醒を促していることが明らかになった。また、オランダにおいては、麻薬やアルレコールに対するオランダ社会の寛容が引き起こす社会的病理が、イスラーム教徒にとって不適切であり、特に子女の教育をめぐって周辺社会から隔絶させようとする傾向が強いことが覚醒の要因となっていることが判明した。さらに、フランスにおいては、同国の厳格な政教分離政策が、聖俗分離の観念をもたないイスラーム教徒との間に摩擦を引き起こしていることがイスラーム復興運動を高揚させていることが明らかになった。 結果として、移民のイスラーム復興運動は、受け入れ国側の移民政策、政教分離政策、および家族観やアルコール、麻薬に対する観念などと移民社会側の価値体系との関係のありように規定されるところが大きいことが明らかになった。新たな検討課題としては、ヨーロッパにおける移民のイスラーム復興運動が、彼らの母国の政治体制に与える影響とその評価である。特にマグレブ諸国とトルコにおいては、近代的国家体制の矛盾がイスラーム復興の形を取って現われるため、本研究を継続的に発展させる必要があろう。
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