研究分担者 |
田中 樹 京都大学, 農学研究科, 助教授 (10231408)
古川 久雄 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00026410)
高谷 好一 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90027582)
三浦 励一 京都大学, 農学研究科, 助手 (60229648)
月原 敏博 大阪市立大学, 文学部, 講師 (10254377)
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研究概要 |
1.西アフリカの半乾燥地における農地土壌の荒廃の原因の一つは,ヨーロッパから導入された反転プラウによる過度の土壌撹乱にあるのではないかと推定されていたが,土壌の断面形態および物理挙動の分析によりそのメカニズムが明らかになった。 2.インド・デカン高原の雑穀農耕の実態を,耕種技術および土地利用の観点から詳細に調査した結果,劣悪な気候・土壌条件のもとで行われる後進的・粗放的農業という従来の一般的理解は覆され,高度な土地利用,多様な農具と洗練された技術体系,およびそれらの帰結としての著しく高い人口扶養能力を有することが明らかとなった。 3.以上の知見を踏まえ,デカン高原にみられる頻回の撹拌浅耕を基調とした技術体系を西アフリカに移転するための作業モデルをまとめ,またその実現可能性,問題点および効果について事前的評価を行った。 4.デカン高原の在来雑穀農耕の一つの特徴は,畜力獲得,地力維持,食生活,ひいては社会経済全体が牛を媒介として緊密に組み上げられていることにあり,完結性が高いため,単に一部の技術要素を取り出しての技術移転は容易でないと考えられた。一方,インドにおいても家畜飼養の経営形態は多様であり,また都市との関係の中で変貌しつつあり,完結的・自給自足的な性格は失われ始めていることも明らかになってきた。 5.西アフリカにみられる伝統農法の諸型を比較した結果,サヘル帯の砂質土壌地帯に分布し手押し除草鋤を特徴とする一型は,サバナ帯から熱帯雨林帯にかけて広くみられる鍬を用いる農耕とは異なる系譜をもつと推定された。この「サヘル型農耕」には土壌保全的性格が強く認められ,他地域における農業再生へのヒントが得られることも期待される。しかし,その農業生態的特性の解明とそれを基礎とする実践技術の確立は今後の課題として残された。
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