研究課題
この共同研究のねらい:熱帯アジアの6大デルタ(珠江、紅河、メコン、チャオプラヤ、イラワジ、ベンガル)を対象として、それぞれのデルタの生態的・歴史的環境のもとで生起した固有の発展の経緯をたどり、それぞれの発展過程の個性と型を総合的に把握して、現在進みつつある経済発展下での土地利用景観の大変貌の意味付けを行う。その上で、21世紀の工業文明のもとでの熱帯デルタの景観的イメージを総観的かつ具体的に描きたい。初年度の平成9年度には、専門領域を異にする8名の研究者が、様式2の調査研究実績一覧に示したように、珠江、紅河、メコン、イラワジ、ベンガルデルタを広く踏査した。閻小培は地元の珠江を、野間は大学院生2名を伴ってメコンと紅河を、安藤はイラワジを集中的に調査したが、海田、冨田、タナワット、グエンの4名はグループを組んでできるだけ一緒に行動し、常時知見を交換しつつ、メコン、イラワジ、ベンガルデルタを広く踏査した。グエンを1ヶ月間京都に招聘し、また別件で東京大学に滞在中のチャクラボルティを京都に招き、集中的に研究例会を開催した。現地調査で得られた知見と意見を交換すべく、3月には全員参加のセミナーを開いた。その結果、それぞれのデルタの個性が次第に見えてくるとともに、農業的土地利用を中心にして歴史を土地に刻みつけてゆく「野の世界のデルタ」(典型的にはベンガルとイラワジ)と、商業的利得を契機として機会の主義的に土地利用を変えてゆく「海域世界型デルタ」(典型的にはチャオプラヤと珠江)の2類型が明らかになってきた。平成10年度には、土地利用景観の大変貌を経験しつつある海域世界型デルタ(チャオプラヤと珠江)を全員で同時期に踏査し、現地セミナーを繰り返して、共通認識を高め、それをもとにして報告書を作成するように計画している。