研究課題
国際学術研究
われわれは、日本の中山間地域を対象とした過疎研究の成果をふまえて、韓国、中国における過疎・山村問題の実態を明らかにし、その克服策について比較検討しようとした。具体的には、農家・集落レベルでの分析が可能なようにいくつかの集落を選定し、その全戸調査を行った。日本と韓国については、資本主義国における経済構造と自然的立地的類似性から、日本を数年ないし十数年遅れて韓国が追随しているように見え、一見タイムラグのようにも見られた。しかし、より詳細な調査分析によれば、両者の間には大きな差異のあることが明らかになった。その違いは韓国における農村集落の結束度と家としての結びつきの差によるところが多いと考えられる。例えば、韓国の離村家族と家との関係は、仕送りという形で繋がっており、日本の場合とは大きな違いがある。他方、中国においては、社会主義経済体制下の条件不利地域であるため、日本や韓国の場合と異なる。市場開放政策が進む中で、近年急速に沿岸都市部と内陸農山村部、農山村部の中でも地域間の格差が広がってきている。中国・寧夏の南部山村地域の場合、現状ではいわゆる「過疎問題」というよりは「過密問題」としての現象を呈している。したがって、これら3国の条件不利地域問題を発展段階の差として把えることはできない。むしろ「型」の違いとして把え直す必要があるものと考えられる。共通の問題としては、条件不利地域における就労の場の確保、雇用機会の創出を、地域の資源を生かすことによって内部構造的に造り出す手法が求められている。それと同時に、現在韓国で検討されているヨーロッパ型テカップリング政策の導入と、中国における集落移転政策と貧困対策、そして日本の中山間地域対策とを比較した上で、それらのより効果的な解決方策を見つけだす必要がある。