研究課題
基盤研究(A)
本研究を通して得られた知見は以下の通りである。1)空間制約下の最適森林計画モデルを構築し分析した結果、隣接する林分の伐採間隔を長くすれば、林齢分布・林齢格差分布が非均一になり種多様性に貢献することが分かった。2)森林・農地経営に対する最適確率制御モデルを構案し、不確実要素の最適経営に及ぼす影響について分析した結果、価格の変動幅が上昇した場合農家が経営を維持できる最低価格レベルが低下していくことが分かった。また、林家は価格の減少に伴い伐期を長くし、ある価格域を下回ると経営放棄する傾向があることが分かった。3)スギ人工林の下層における全維管束植物の出現状況調査を行った結果、地形因子が大きく影響を与え、管理作業の実行によってススキ等の陽性植物が繁茂し、谷地形を生育地とする多年生草本種が衰退する傾向が認められた。4)英国の人工造林地における調査では、林種ごとの林冠構造の違い・間伐の強度が光環境を通して林床植物の種多様性に影響することが示唆され、ブナ老齢造林地においては、生物多様性の維持に林縁が大きな役割を果たすことが分かった。5)希少種ハナガガシの個体群の保金を想定し、集水域地形特性の個体群構造と動態に対する影響について解析した結果、保金対象種の分布は下部谷壁斜面に集中し、流路密度に代表される地形発達度の違いが斜面長および斜面上方の土壌水分条件を通しでハナガガシの個体密度に影響することが分かった。6)尾根一谷の斜面系列を軸に郷土樹種の出現調査を行った結果、谷を中心とする伐区設定では、収穫材積に対する種数減少の危険度が尾根を中心とする伐区設定よりも高いことが分かった。7)イギリスの森林再生補助プログラムについて調査した結果、その効果はそれほど大きくなく、再生場所についてはランダム選択によるのではなく、戦略的に指定すればより効果的に野生動物種を伴った森林再生が可能になることが分かった。
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