本調査研究は、日系自動車メーカーのNAFTAでの海外事業展開の経緯ならびに原因分析を社会・経済環境の観点から分析し、その結果を評価する会議を米国とカナダで行った。明かにした主な内容は以下の点である。 1 日本の自動車メーカーの海外進出を促進した国内要因は、政治・経済要因が非常に大きかった。 2 NAFTAでの日系自動車メーカーの国際事業展開にとり社会・経済的な要因は大きな作用を及ぼしている。 3 日系自動車メーカーの国際事業展開は新たな時期にさしかかっている。とくに米国をはじめとする先進市場経済では車の新規需要がほぼ頭打ち状態にある。顧客価値満足追究の経営戦略がますます重要になるとともに、製品の品質のみならず、生産過程における効率性、品質管理、技術革新・改良の必要性が極め高くなっている。環境問題が大きくクローズアップされてきており、その対策が火急な問題である。 4 NAFTAへ進出した自動車メーカーは進出国の雇用の拡大と所得の上昇に役立っているが、現地化(ローカリゼーション)への努力は並なみならぬものがある。具体的には、進出国の地理的、文化的、社会環境にあわせて日本式経営の一部をうまく適合させたり、同時に現地国企業の経営方法の一部を取り入れて現地の社会環境への適応が図られている。一例を挙げれば、部品の納入システムは単にJIT法を採用するのではなく、広大な地理条件に適合すべくシステム・インテグレーター制を開発・採用することで成果につなげている。このような例は他にも人事管理面等幾つかの面に及んでいる。 5 他面、海外生産が活発になるにつれて、新たな摩擦が発生している。日本式経営そのものに関することや、地域経済協定国の企業間同士の取引が日系企業よりも税制面等で優遇されているなど、検討すべき課題がある。
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