本研究の主たる目的は、1975年と1985年当時、日本各地の大学に留学生として滞在し、その後帰国した人々を本国に訪ねて詳細な面接調査を行い、日本留学経験が帰国後の生活にどのような形で活用され、どのような問題をはらんでいるかを明らかにすることである。調査対象としては、日本留学生の中でも多数を占める中国、韓国、台湾の3ヶ国、留学という形の人物交流で日本とのインバランスが問題になっている米国の4ヶ国を取り上げる。本研究には3ヶ年を予定しており、その2年目にあたる本年度は、昨年度の韓国及び台湾に引き続き、2度にわたって中国での面接調査を実施した。なお、私たちは1995年から96年にかけて在日留学生及び帰国留学生を対象とする大規模な質問紙調査を実施しており、ここでの面接調査はそれを補完するものとして位置づけられる。 まず帰国留学生を対象とする上記の質問紙調査の中で、将来に計画された面接調査への協力の意思を表明した回答者の中から候補者を選んで依頼状を送付し、その回答を待って日程の調整をしたうえで現地調査を実施した。本年度は1998年8月23日から8月31日にかけて北京、ハルビン、大連に在住する15名、次いで1999年1月22日から27日にかけて上海、杭州に在住する8名、合計23名の元日本留学生に面接して、日本留学前の準備段階から留学中の経験、さらに帰国後の仕事や生活などに関して詳しい話をうかがった。そうした面接記録に基づいて、現在、個々の結果を事例研究の形で整理しているところである。
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