研究課題/領域番号 |
09041082
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研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
黒田 壽郎 国際大学, 大学院・国際関係学研究科, 教授 (90051309)
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研究分担者 |
立本 成文 京都大学, 東南アジア研究センター, 所長/教授 (50027588)
樺山 紘一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科・文学部, 教授 (30027544)
真田 芳憲 中央大学, 法学部, 教授 (50055167)
櫻井 秀子 国際大学, 研究所, 講師 (60203345)
黒田 美代子 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (80277897)
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キーワード | 同業者組合 / 地中海 / 商業 / イスラーム / アレッポ / ダミエッタ / スーク / 伝統経済 |
研究概要 |
地中海を挟んだヨーロッパと中東世界の商業世界の成立の基盤、背景について比較、検討を加える本研究の最終年度として、本年は主としてこれまでに入手した情報の、資料を補強すると同時に、発見されたさまざまな事態に関する分析の結果の、一貫性を追求するための作業に重点をおいた。前2年間の研究は、ヨーロッパの場合、ギルドが自己完結的、自律的であったのに反し、中東世界の場合、ヒルファは市場という全体の中の一部にすぎず、その自律性もこの枠組を基盤とするものである点を明らかにしてきた。 自律的なギルドと、<市場に埋め込まれた>ヒルファは、それぞれ独自な性質を備えていると同時に、それを含み込んでいる社会の枠組の特質を端的に反映している。その意味で職能組合のありようは、その社会の構造を映し出す鏡であるといいうるであろう。今年度はエジプト、シリアにおいて出版業、織物業等の限られた職業に関するさらに細かな実態調査を進める一方で、ヒルファが共同体の内部に埋め込まれている実態を、浮き彫りにする研究を行った。それぞれの職能組合のメンバーについては、お互いに結束して相互扶助を行い、職業の繁栄、技術の向上を目指すという意志は弱く、むしろ市場の民の一員としてその枠組の中で行動する傾向が強い。ヒルファを取り扱うに当たっては、行政の側も地域的集団、宗教的集団、同郷的集団等と同等のものとして、治安、税収に困難をきたさない限り、ほとんど強い干渉を行っていない。 このような事実は、中東社会の政治、経済的統合がいかに緩やかなものであったかを示すと同時に、近代的な資本主義的活動様式が流入、浸透した後に、それがこの地の、巨大なインフォーマル・セクターの基盤として残存している実態、様態を明らかにするものである。
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