研究課題
国際学術研究
日本への就労目的で在日する親(出稼ぎ)と子どもの問題を取りあげるとき、子どもの置かれた立場は次の三つのケースが考えられる。1.親に連れられて来日し、現在も日本に滞在する子どもたち。-彼らは生まれ育った環境から離され、日本社会への適応を余儀なくされている。彼らは、日本人とは異なる生活の歴史をもっており、適応はこれまで依拠してきた価値体系・生活文化の剥奪と再組織化を意味する。日本の子どもたちに仲間として受け入れてもらうためには、母国人である「私」を捨てなければならない状況に置かれ、その結果、自らアイデンティティの揺れを体験している。2.ある期間、親と共に日本に住んでいた、あるいは日本で生まれたが、現在母国に帰った子どもたち。-彼らは日本社会と文化への適応のプロセスを体験し、帰国してからは母国への再適応の問題に直面している。3.母国に残され、出稼ぎに行った親と離れて暮している子どもたち。-親は不退転の壁として彼らに対して在存するとき、彼らのエネルギーがそれにぶつかり、分化し結合されて、子どもたちの成長が図られる。個性を自由に伸ばしていくためには、強力な抑制者が必要であるという、人間のもつパラドックスを忘れてはならない。彼らはそうした壁(抑制者)の在存をもっていない。1.及び2.のケースは、彼ら自身の問題と併せてて、国際化社会における日本人の子どもたち自身の問題でもある。3.のケースは、出稼ぎ現象に伴なう問題であると同時に、日本人の親そのものの在り方も問われている。外国人子女教育に関する課題は、そのままわれわれ自身の在り方の課題とも言える。
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