研究課題/領域番号 |
09041089
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
篠田 武司 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20115405)
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研究分担者 |
伊藤 正純 桃山学院大学, 教育研究所, 教授 (20132459)
湯浅 良夫 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20166846)
熊沢 誠 甲南大学, 経済学部, 教授 (20068109)
宮本 太郎 立命館大学, 政策科学部, 助教授 (00229890)
浪江 巌 立命館大学, 経営学部, 教授 (40066931)
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キーワード | 失業率 / 労働能力 / 労働市場の柔軟化 / 国際競争 / ボルボ / LO / VI / 労働組織 |
研究概要 |
スウェーデンの失業率は、約10%で「大量失業」ともいわれる状態が続いている。政府は、長期的には完全雇用の達成を従来のように目標として掲げながら、短期的には2,000年度までに4%に失業率と下げることを目指している。しかし、この課題は容易ではない。経済のEU化、あるいは国際化のなかで1国の枠内での経済的調整は困難になっているからである。政府は、産業の高度化(情報化技術)に対応できるような労働能力の開発による失業の減少を政策として掲げ、労働側(LO:スウェーデン労働組合総連合)は、インフレなき需要拡大(EUへの加盟はそれに寄与するだろう)による経済成長が失業対策としてもっとも有効だと考える。これに対して経営側(SAF:経営者団体連合、あるいはその中心たるVI:機械産業経営者連合)は失業対策に関して必ずしも明確な政策をもっている訳ではない。経営側の課題は、国際競争の圧力のもと、労働市場の柔軟化(賃金の柔軟化、労働時間の柔軟化、交渉の非中央化)による労働コストの削滅-企業の競争力の向上と、労働能力の開発や労働組織の改革による生産性向上が最も重要な課題である。スウェーデンの経済を支えてきた輸出企業は、工場の海外移転をむしろ拡大し、国内での生産と減らし、雇用を減少させている。本年度の調量は、スウェーデン経済の国際化のなかですすむ産業関係の変化の実態を昨年度の調査対象の補足調量を基本にしながら新たな対象と加えて行った。個別企業での調査は、ボルボの本社工場とエンジン工場、さらにボルボへの部品供給会社、エリクソン、アンリツで行い、賃金の柔軟化・能力主義化(ホワイトカラーではそれがさらに顕著)が確認されるとともに、日本の能力主義化との違いが明らかとなった。そのほか、労働組織の変化、企業間関係のJIT化への変化についても多くの知見が得られた、経営者団体、労働組合等の各経済団体の中央組織や政府の労働関係の機関(労働省、地域雇用サービスセンターなど)への調査についても、本年度は国際競争の下での労働関係の変化や、あるいは雇用促進のための政策についての見解をインタビューし、議論とした。上記のように、各組織の見解は微妙に違う。そこでは、雇用が少なくとも一国レベルでの問題に留まらない課題であることが、特に早くからオープン経済を目指してきたスウェーデンでは、明らかになってきているといえる。本年度の調査で、得た知見は多い。研究課題についてのかなり詳細な制度や政策分析が行われたと考える。
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