研究課題
国際学術研究
本研究は、ライフコース・アプローチにより、女性の開発参加を阻んでいる社会的・慣習的要因、「開発と女性」プロジェクトがもたらす女性・男性および地域への影響等について、ジェンダー分析を行うとともに、女性が男性と同等の開発の担い手として社会的、政治的、経済的状況の変革に主体的に関わりながら自立する力をつける(エンパワーメント)方策を明らかにすることを目的とした。平成8年度にジェンダー分析の枠組み作成、パイロット調査を実施し、今年度はそれにもとづいて、構造化された質問票による住民男女に対するインタビュー調査を中心とする本調査をタイ、ネパール両国において実施した。本調査は、女性の収入創出プロジェクトの活動が行われている地域(タイ2地域、ネパール3地域)において、(1)質問票による住民(プロジェクトへの参加女性、非参加女性、非参加男性)を対象とするインタビュー調査、(2)村落レベルでのリーダー、開発関連活動担当者等への聞き取り調査、(3)開発と女性に関する資料収集を行った。質問票によるインタビュー調査は、両国研究分担者の指導する学生が現地語にて実施し、タイ174票、ネパール142票の有効回答を得た。調査票の集計後、タイチーム、ネパールチームの合同研究会議を開き、質問票インタビュー調査の集計結果にもとづく報告、研究討議を行った。質問票では、プロジェクトの活動、結婚・家族、生産活動、日常的な生活・作業、現金収入、進歩・発展・開発等について女性のエンパワーメントの実態およびその促進(阻害)要因を探った。その結果、エンパワーメントの達成プロセスにおいては、タイ、ネパールともに、女性が現金収入を得ること、意思決定に関わること、周囲からの信頼を得ることが重要な条件であることが明らかになり、それらに影響を及ぼす要因として、タイ調査結果からは教育程度、ネパール調査結果からはジャート(カースト)が指摘された。