研究課題
国際学術研究
ペルー国立地球物理研究所(IGP)では過去40年以上にわたって1万点をこえるペルー全土の重力データ(IGPデータ)が蓄積されてきたが、それらには統一した処理が行なわれておらず、散逸したままになっていた。一方、日本側にはアンデス山脈横断ルートなどで過去に独自に観測した高品質の重力データが存在するが、観測点数も地域的にも非常に限られたものであった。今回、我々は1995年以来、IGPと協力して、アンデス山脈の地下構造をさぐり、その隆起のメカニズムをさぐるために、(1)野帳にまで遡るIGPの全重力データのチェックを完成させ、すべてのデータに対して統一した処理をほどこす、(2)各測線の基点における重力値の再観測を完成させ、ペルー全土における信頼度の高い重力値の結合を行なって全IGPデータを再構築する、(3)日本側データを各結節点での参照点として有効に利用するため、可能な限りの再測を行なう、(4)標高4000mをこえる西アンデス大高原に存在する枕状溶岩を含む水平成層の地質学的性質を調べる、という基本方針のもとに、ペルー全土の重力データの整備と構築、および、地質調査・古地磁気調査を行なってきた。特に、IGPデータに含まれていたさまざまな不具合を解消するために、各観測ルートが交差する地域を中心とした大がかりな再重力測定をペルー全土で行なった。これらの作業の結果、約9000点におよぶペルー全土の重力データベースを構築することができた。これらのデータは約1.5〜2mGal程度の精度をもち、世界で初めて高精度のペルー全土重力異常図の作成が可能となった。また同時に、ペルー南部における地質調査の結果から、アバンカイ周辺において大規模な断層が存在することを発見した。この大断層はアンデス山脈の山体規模が急に遷移しはじめる地域と符合しており、アンデス山脈の形成に関して重要な意味を持つことがわかった。今回の成果はペルーと日本の共同の成果として、ペルー全土重力異常図の形で公開予定である。
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