研究課題
国際学術研究
主要な養蚕国におけるカイコの保存品種について、遺伝学的調査を行い、併せて野蚕(クワコ)の採集とその染色体数や形質調査などを試みた。タイおよびインドでは、研究所、大学、民間会社、さらに農家などに保存されている非休眠多化性蚕品種の遺伝学的調査を行い、熱帯地域特有の高温耐性をもつ多くの品種の遺伝的・生理的特徴の相違を確認した。中国およびウズベキスタンでは、浙江省を中心に現在最も盛んに養蚕が行われている地域の蚕品種、中国からシルクロードとしてカイコが拡散していったと考えられている中央アジアとの関係などについて調査検討した。中国では1化性から多化性まで多くの蚕品種が保存されているが、ウズベキスタンでは1化性がほとんどである。これは気候の制約によるためで、その後養蚕が広まった欧州も1化性蚕品種が主になったようである。韓国ではすでに養蚕は衰退したものの、朝鮮半島特有の3眠蚕について調査することができた。また、ブラジルでは古くはイタリアから養蚕技術が導入されたことから、特有の蚕品種の探索をしたが、その後日本から導入された生産効率のよい蚕品種に変わり、イタリア系の蚕品種は見出せなかった。いずれの国においても、遺伝子資源の国外への持ちだしは禁じられている。カイコは、産業昆虫として各国でとくに重要視されている。しかし、遺伝情報の交換は可能であることから、本研究で得られた情報などは、データベースとして構築するつもりである。十分な解析や利用にはかなりの時間がかかるが、着実に進展している。
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