研究概要 |
単包条虫は全世界的に分布し、人に致命的な病害をもたらすことから、特に畜産の盛んな諸国では重要な人畜共通感染症である。本種に近縁種の有鉤条虫も脳嚢虫症を引き起こすことで中米で問題となっている。単包条虫は中間宿主を異にする種内変異が存在することがすでに知られ、それぞれの地域に適応したいくつかの株が存在することが知られている。ウルグアイの単包条虫は寄生虫の環境適応の研究には理想的なモデルと考えられる。本研究では、世界的に人体感染率が最も高いこのウルグアイの単包条虫の環境適応について知るため、特に中間宿主レベルの包虫の発育運命と、それに関与する因子について調べ、さらに多包条虫と単包条虫の今後の終宿主調査のための診断法開発を試みた。1年目の調査ではウルグアイにおけるヒツジの多包虫感染率が激減していることが示され、ウルグアイでは犬の単包条虫の感染率が近年顕著に減少し、自然感染犬の検出は困難となった。ウルグアイの単包条虫の糞便抗原検出法のためにモノクロナール抗体の作成みたが成功しなかった。2年目にはモノクロナール抗体の作成をおこない、糞便抗原検出法の検討を行った。モノクロナール抗体の作成のためにはイヌヘの感染実験を試み、回収された成虫を培養し、抗原とした。2年目に作成されたモノクロナール抗体はEgC1,2,3,4,5,6および8で、条虫間の交差反応は認められなかったが、犬回虫との交差が示唆された。ウルグアイの隣国で家畜の移動があるアルゼンチンの単包条虫の種内変異について遺伝的多様性について調べるために材料収集を行った。中米に分布するフォーゲル包条虫については代替終宿主を開発し、終宿主体内での発育を調べた。
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