研究概要 |
日本列島には100種ほどの在来陸生哺乳類が生息し,小型哺乳類を中心に固有種が多い。在来のネズミ類14種のうち8種は日本固有種である。日本産の小型哺乳類について、ロシア産との分子系統学的検討を試みた。日本産哺乳類と大睦産種との系統関係をミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子,核遺伝子のIRBPエクソン領域について解析したところ,北海道に生息する種はロシア産の哺乳類種と強い関連性を示した。特にハントウアカネズミでは著しい類縁性を示した。一方、北海道固有種のムクゲネズミでは独自の大きな変異を蓄積していた。このムクゲネズミとタイリクヤチネズの間の分岐年代はラットとマウスの分岐年代を1000万年前と仮に定めたときに,およそ100-200万年前と権定され,第四紀の初頭にはすでに渡来した可能性も示唆された。北海道は氷河期の初期から最近に至るまでロシア産哺乳類の影響をまんべんなく受けていたものと思われた。本州・四国・九州地域の種で大陸産のものと強い遺伝的類縁性を示したものは調べた限りではカヤネズミだけであった。カヤネズミにおいてはロシア、韓国、日本とでほとんど変異はなく、この種が近年この地域に分布を広げたものと推察された。他の種においては高い固有性を示し、化石からの渡来年代の推定と大きな不一致が認められた。例えば、これまで、第四紀の後期に渡来したと考えられていたコウベモグラはロシア産韓国産のものと大きな変異性が観察された。
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