近年発達した生命科学の手法を用い、熱帯地域に見られる低身長、マラリア抵抗性といった現象を、遺伝的多様性の観点から細胞・分子レベルにおいて検索し、遺伝的適応か否か明らかにするとともに、ancientDNA解析からそれらの起源を探ることを目的とした。また、遺伝情報の保存と言う観点から、細胞株の樹立をおこない、既に樹立している少数民族の細胞株と合わせ「民族の細胞銀行」形作ることを目指した。 1.集団調査としては、タイ北部山岳民族のアカ・リス族、非定住性狩猟採集民ムラブリを調査の対象とし、それぞれ200人、50人、100人の採血をおこない、ウイルス感染・血液型・DNA多型をしらべた。細胞株化については、300株を得た。 2.3日熱マラリア原虫のレセプターであり抵抗性と関連するダフィー血液型抗原に関しては、血清・分子型判定をおこない、血清判定の不備を指摘するとともに、アジアにおけるFy対立遺伝子の存在を否定した。 3.インドネシアにおいて卵形赤血球症とマラリア種との関係を調べ、その低抗性と原虫種との関連を否定した。 4.EBウイルス陽性Tリンパ腫におけるウイルス亜型の検索と、宿主側の遺伝的背景の検索を開始した。
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