マダガスカルにおけるワオキツネザルの生態学的・集団遺伝学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09041158
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 小山 直樹 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (40027496)
• 研究分担者: 川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00177750) ; 高畑 由起夫 関西学院大学, 総合政策学部, 助教授 (90183061)
• キーワード: マダガスカル / ワオキツネザル / 人口学 / 行動発達 / 行動学 / 外部寄生虫 / グル-ミング / 集団遺伝学

研究概要

調査は主としてマダガスカル南部のベレンティ保護区でおこなった。小山は14.2ヘクタールの広さの主調査地内に生息するワオキツネザル5群90頭について、人口学的調査をおこなった。出生は19頭であったが、おとなのメスの数が増加すると出産率が減少する傾向が認められた。研究協力者の宮本は、C2群を対象に赤ん坊の行動発達について調査をおこなった。1997年の出産期である9月にはC2群の4頭の母親が赤ん坊を産んだが、赤ん坊の発達にともなって生じる母子関係の変化、離乳の時期、母以外の群れのメンバーとの関係など、これまであまり調べられていなかった研究分野について、成果をあげている。高畑はCX群を対象に行動学的研究をおこなった。CX群では、群間の出会いは10時台と13〜15時台に多くみられた。メスが出産すると、隣接群の行動域内へ侵入する頻度が減少するなど、出産を契機にして遊動に変化が生じた。オスはメスに比べて単独で過ごす時間が長く、近接個体数も少ない。菜食時には個体間距離が増大し、活動の種類によって近接関係に有意な差が認められた。川本らは27頭の個体を捕獲し、血液、外部寄生虫(マダニ類)の採集、形態計測、指掌紋の採取および歯式の判定をおこなった。真猿類は指でグル-ミングをおこなうが、原猿類であるワオキツネザルは舌を使ってなめるグル-ミングをおこなう。しかし、舌ではダニなどの外部寄生虫を十分には取り除けないようである。特に単独で過ごす割合の高いオスの中には、多くのダニをつけている個体がいて、他個体から受けるグル-ミング行動との関連性を調べる必要がある。採取した血液試料を使って、集団内にどの程度の遺伝的変異性があるかを検索中である。蛋白質、核DNA、ミトコンドリアDNAの分析結果が出てくれば、集団遺伝学的な観点からの集団構造の一端が明らかになるだろう。

研究成果

• [文献書誌] Nakamichi, M., M.L.O.Rakototiana and N.Koyama: "Effects of spatial proximity and alliances on dominance relations among female ring-tailed lemurs(Lemur catta)at Berenty Reserve,Madagascar." Primates. 38(3). 331-334 (1997)
• [文献書誌] Nakamichi, M.and N.Koyama: "Social relationships among ring-tailed lemurs(Lemur catta)in two free-ranging troops at Berenty Reserve." Int.J.Primatol.18(1). 73-93 (1997)
• [文献書誌] 川本 芳: "ミトコンドリアDNA変異を利用したニホンザル地域個体群の遺伝的モニタリング" ワイルドライフ・フォーラム. 3(1). 31-37 (1997)
• [文献書誌] Hirai, H., Kawamoto, Y.: "Tandem dupulication of nucleus organizer region(NOR)in the Japanese masaques,Macaca fuscata fuscata." Chromosome Reserch. (in press).
• [文献書誌] Takahata, Y.et al.: "Reproduction of wild Japanese macaque females of Yakushima and Kinkazan Islands:A preliminary report." Primates. (in press).