研究概要 |
マダガスカル南部のベレンティ保護区に設定した約14.2ヘクタールの広さの主調査地内に生息するワオキツネザル6群(T2,T1,C2A、C2B,C1,CX)及び1グループ(HSK-G)計約100頭を対象に調査をおこなった。4月から6月にかけてC2A群で交尾行動を観察し、メスの発情が4〜9時間持続すること、メスの順位と発情の順番に関連がみられないこと、メスによる交尾相手の選択がみられないことなど、これまでに得られていた交尾行動とは少し違う知見を得た(宮本)。また出産日から逆算して、メス6頭の妊娠期間は135日〜140日であることがわかった.CX群の観察などから、集団サイズと出産率に逆相関の傾向がみられ、集団内、集団間のメスの競争の激しさが示唆されている(高畑).T1群の行列の観察から、移動時に先頭を行くのはその年生まれのアカンボウを持たないオトナメスで、次にアカンボウ持ちのオトナメス、コドモ、ワカモノ、そして最後尾にはオトナオスという傾向があり、オトナオスが先頭を行くことはまれであった。このことは、移動の時期、方向を決定するのはオトナメスであり、メス優位の社会を反映していることがわかった(小山)。出生、移入、死亡、移出など個体群動態と群間関係についての調査から、特に3才に達したオスの他群への加入の過程を追跡し、ぺアで移籍することの損失と利益について考察した(市野)。集団遺伝学的調査の一環として、8月に25頭、11月に21頭捕獲し、体重測定、採血をおこなった。さらに飼育中のアイアイなど別種の血液資料も採取し、現在DNAにみられる個体変異を分析中である。また自然集団の染色体解析には、耳の皮膚の切片を組織培養する方法が有効であった。なおダニ、ハジラミ、蟯虫などの寄生虫についても分析を進めている(川本、平井)。
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