研究概要 |
1997年から1999年の期間、マダガスカル・ベレンティ保護区においてワオキツネザルの生態学的・集団遺伝学的調査をおこなった。我々が設定した14.2ヘクタールの広さの主調査地内に行動域をもつワオキツネザル6群(C2A,C2B,C1,CX,T1,T2)98頭を主な対象にして調査をおこない、いくつかの新しい知見を得た。1997年の調査では、捕獲した22頭の個体から顔面に寄生していたマダニ(Haemaphysalis Iemuris)184匹を採取したが、オスのダニが全体の93%を占め、メスのダニはわずか5%だけであった。このような偏りがダニの雌雄による繁殖戦略の違いを反映していることを示唆した(Takahata et al.,1998)。首都の動植物園で飼育されていたキツネザル類7種類から採取した血液標本について分析をおこない、種によって染色体のテロメア配列の分化パターンに違いがあり、染色体の進化の機構の一端を明らかにした(Go et al.,2000)。1999年には103頭のワオキツネザルを捕獲し、形態計測をおこなった。これらの個体から採取した血液標本を使って、現在DNAレベルの分析をおこなっている。生態学的調査として、繁殖に関わるパラメーター(交尾行動、出産時期、死産間隔)の分析や個体群動態、社会関係など多岐にわたる調査をおこなっている。これらの成果の一部はすでに出版されていて、近い血縁関係にあるメス間では、そうでないメス間より高い近接性、頻繁なグルーミングがみられている(Nakamichi et al.,1997,Nakamichi and Koyama,2000)。研究成果はこれからも順次出版していく予定である。(Koyama et al.,in preparation,Takahata et al.,in preparation)。
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