マッセルウォッチ:二枚貝を生物指標としたアジアの海洋汚染モニタリング

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09041163
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60116952)
• 研究分担者: HUE N.D. ハノイ大学, 化学部, 教授 ; SUBRAMANIAN エイ アンナマライ大学, 海洋生物学研究所, 教授 ; 岩田 久人 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (10271652) ; 山口 之彦 大阪市立環境科学研究所, 研究員 ; 高田 秀重 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70187970)
• キーワード: マッセルウォッチ / 二枚貝 / イガイ / アジア / 有機塩素化合物 / ブチルスズ化合物 / 海洋汚染 / 多環芳香族化合物

研究概要

二枚貝を生物指標にしてアジアの海洋汚染を明らかにすることが本研究の目的である。初年度は以下のような調査を実施し成果を得た。
1)インドとインドネシアの研究者を招へいし、有機塩素化合物や有機スズ化合物など有害物質の生産・利用の現状と海洋汚染の実態について情報を交換するとともに調査計画の詳細な打合せを行ない許可申請書を作成した。また、インド、タイ、フィリピンの研究者から若干の二枚貝試料および海底堆積物試料を入手し、有害物質の化学分析を試みた。
2)平成9年10〜11月にベトナムで現地調査を実施し、沿岸域7地点でミドリイガイを採取した。またハノイ近郊で渡り鳥や母乳の試料も入手した。平成10年3月には、インドの調査を予定している。
3)これまでに入手したミドリイガイの分析では、すべての試料から有機塩素化合物が検出され、この種の物質による熱帯アジア地域の汚染の拡大が示唆された。とくに、インドでは農薬HCHによる汚染が顕在化しており、フィリピンの場合は比較的高いPCBの濃度レベルが認められた。
4)ほとんどの二枚貝試料からブチルスズ化合物が検出され、有機スズ化合物による汚染が途上国にまで拡がっていることを世界で初めて実証した。タイでは比較的高濃度のブチルスズ化合物が検出され、養殖のための器材にブチルスズ化合物を利用していることが示唆された。
5)海洋汚染の国際比較を試みたところ、先進諸国に比べ熱帯アジアの有機スズ残留濃度は低値であったが、途上国では防汚塗料の需要拡大が指摘されており、今後の汚染の進行が予測された。
二年次は、マレーシアとインドネシアの調査を実施する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kan-atireklap, S.: "Contamination by butyltin compounds and organochlorine residues in green mussel from Thailand coastal waters" Environmental Pollution. 97(1). 79-89 (1997)
• [文献書誌] Kan-atireklap, S.: "Contamination by butyltin compounds in sediments from Thailand" Marine Pollution Bulletin. 34(11). 894-899 (1997)
• [文献書誌] Prudente, M.: "Metal levels in some commercial fish species from Manila Bay,the Philippines" Marine Pollution Bulletin. 34(8). 671-674 (1997)
• [文献書誌] Lee, D.B.: "Organochlorine residues in soil and sediments from Manila and nearby provinces,Philippines" Toxicological and Environmental Chemistry. 60. 171-181 (1997)
• [文献書誌] Kan-atireklap, S.: "Butyltin compounds and organochlorine residues in green mussels (Perna viridis) from India" Toxicological and Environmental Chemistry. (印刷中). (1998)
• [文献書誌] Tanabe, S.: "Accumulation features of polychlorinated biphenyls and organochlorine pesticides in resident and migratory birds from India" Archives of Environmental Contamination and Toxicology. (印刷中). (1998)