研究概要 |
平成11年度は,カナダ,ブリティッシュコロンビア州北東部に分布する三畳紀後期のパードネ層の2地点を6月中旬から2ヶ月にわたり発掘調査を行った.平成10年度に発掘を開始した大型魚竜の頭骨と前肢の一部の発掘を完了し,ロイヤルティレル博物館に搬送し,剖出作業を開始した.体骨格についても,胸胴椎,肋骨,尾椎がほぼ連続的に保存されていることを確認できたが,本調査で発掘を行うには十分な時間と予算が確保できなかったため,将来の発掘のために埋め戻しを行った.本標本は,頭骨の推定長5メートル,推定全長23メートルであることが明らかになり,これまで報告されていた最大の海生爬虫類が全長15メートルに過ぎないことから,海生爬虫類の中では最も大きな個体で,海生脊椎動物の中でもシロナガスクジラに次ぐ大きさである.三畳紀後期には,このような大型の脊椎動物の進化を可能にした豊かな海洋環境が存在していたことが明らかになった.頭骨はまだ剖出作業中だが,これまでに発見された歯が著しく小さく,後頭部が発達していたことから,海生爬虫類では初めて,濾過食であった可能性が指摘された.
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