研究概要 |
中国土壌中の微小菌類の種多様性について研究するため1997年、1998年に新彊ウイグル自治区のタクラマカン砂漠周辺のオアシスや天山山脈北部で、1999年に青海省、チベット自治区で土壌を採集し、土壌中よりヒトや動物に病原性が報告されている真菌やカビ毒生産菌の分離を試みた。また、その過程で新種や分離例に極めて少ない菌類についても研究を行った。併せて北京の病院で直接真菌症患者より病原真菌の分離を行った。新彊ウイグル自治区では砂漠、荒地、ステップ、畑地、水田などから1869試料を、青海省、チベット自治区では高原や山岳地帯の草原などから183試料を採集した。今回の研究の結果、系統分類学的に非常にユニークな菌としてパミール高原から分離報告したEmericellaappendiculataがタクラマカン砂漠土壌から再分離され、同じく付属糸を持つ子のう胞子を形成する新らたな種であるE.qinqixianiiがタクラマカン砂漠の周辺の土壌から多数分離された。これらの種は子のう菌のこれまでの分類の概念に入らない非常にユニークな形質を有している。また、北京の同仁病院の外耳洞炎患者から外耳洞内に菌糸塊を形成する3種の病原性アスペルギルスを分離した。これらの菌はいずれも新種であり、Aspergillus beijingensis,Aspergillus qizutongii,Aspergillus wangduanliiと命名して発表した。また、これまで土壌中には少ないと言われていた好乾燥菌であるEurotiumが砂漠土壌から高頻度で分離されE.amstelodami,E.chevalieri,E.cristatum,E.herbariorum,E.repens,E.rubrumが同定された。同定された79%をE.amstelodamiが占めた。
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