研究課題
国際学術研究
バージャー病は主として下肢血管に生じてくる難治性の中型の血管炎である。他の上肢血管や腹部血管など様々な部位に生じ、病埋学的には免疫細胞の浸潤を伴う非特異的な炎症所見を認める。その成因として喫煙との関連が言われているが、現在までのところ明らかではない.本研究ではバージャー病発症の成因の手がかりとしての遺伝要因に注目し、特に免疫制御遺伝子であるHLAのならびにその近傍にあるMICA遺伝子との関連について本症が多いアジア、中近東、中南米諸国の本症患者の遺伝子レベルでの精密なタイピングをわが国を中心として進めた。現在までのところ本症の遺伝子レベルでのHLAタイピングは、我々のグループが日本人患者を用いて進めており、本研究の開始時点でHLAクラスIIHLA-DR4D、15a、16との相関が明らかになってきた.そこで諸外国との比較研究は本症発症におけるHLAの役割を理解する上で重要な貢献をするものと考えられた。本研究は大きく分けてバージャー病患者の診断基準作製、登録、各国における非罹患健常者対照群の登録、遺伝子の単離、HLA遺伝子のタイピングというHLAの分子レベルでの解析のパートとプロトコールの作製、検討ならびにタイピング結果の解析のための国際会議の大きく2つのパートよりなった。参加国はアジアからは日本、タイ、インド、中近東からはイスラエル、更に中南米からはメキシコ、コロンビア加えて米国よりバージャー病の専門家の参加を得ることができた。国際会議は平成9年度は11月4日より6日まで長野県軽井沢町にて、また第二回を平成10年10月5日より8日まで米国アトランタにおいて開催した。両方の会では、バージャー病の多発するアジアならびに中南米諸国から研究者を招き1)その臨床病態、2)病理、3)本症の血栓形成性の分子メカニズム、特に血小板凝集能や凝固因子活性との関連、4)危険因子としての喫煙の分子病理、5)本症の遺伝要因、特に免疫制御遺伝子HLAと本症との相関、6)本症の診断、特に接着因子や凝固関連蛋白の検討、7)本症の画像診断の7つのプロジェクトを中心として据え、さらに他の大型の血管炎である高安動脈炎や側頭動脈炎、炎症性大動脈瘤との比較検討により本症の病因ならびに病態について検討を行った。その内容は平成10年12月に、本研究費の援助を受け出版した後付のInternational Journal of Cardiologyの特別号に報告した。
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