研究課題
本調査研究の目的は、これまでトルコ国内で行ってきた伝統薬物の調査を続行し、調査が不十分の事項について資料を収集するとともに、これに加えて、トルコ民族のかっての故地である東方トルコ族分化圏のウズベキスタンについて、現地に伝承されている伝統薬物の民族薬物学的調査を行い、基原、成分等の薬学的評価を加えることにある。本年度は、まずトルコではイスタンブールにおける生薬市場の調査を行った。その結果、アクター(aktar)の商う生薬の種類が減少しており、薬種商というよりも香辛料屋としての性格が強くなっていることが明らかとなった。また、ウズベキスタンにおいては、主として首都タシケントおよびその周辺部農山村地域の生薬、民間薬の調査を行った。その結果、調べ得たかぎりにおいては、タシケント市場の生薬は見るべきものは殆どなく、トルコに較べて相当に衰退していると察せられた。ウズベキスタンは旧ソ連の一部であったことから、特にタシケントにはロシア人が多く住み、近代化が進んでいるが、一方では地方格差が激しく、タシケント以外の地方は民族色が色濃く残り、現在も民間薬が数多く伝承されて使用されていた。今回調査したライナ地方およびカシカダリア地方の農山村地域では、171の伝統薬物とその情報を得ることができた。現在までにおよそ7割にあたる120について分類学的同定がなされた。また、大量収集し得た民間薬の一部は成分分析、活性試験等を始めている。
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