研究概要 |
本年度は、昨年度までに我々が報告してきた研究成果に基づきタイ国のHIV感染者におけるヘルペスウイルス(HHV-6,-7,-8)の動態、およびそれらのウイルス学的・遺伝子学的特性の解析を主な目的とし、種々の研究を遂行するなかで、下記に示す臨床的・基礎的研究成果を得た。 1) HHV-6:タイ国の先天性HIV感染小児群におけるHHV-6感染率や初感染時期を検討したところ、正常小児群あるいはHIVキャリヤー母親からの非先天性HIV感染小児群に比べ、有意にHHV-6感染率が低下していること、HIVとHHV-6の重感染はHIV発症率やその進行程度を充進させる可能性があることなどを明かにした。 2) HHV-7:タイ国HIV感染者におけるHHV-7の動態、ウイルス学的特性を明らかにする目的で、まずはじめにタイ正常人におけるHHV-7のウイルス特性を遺伝子レベルで解析した。その結果、ウイルスゲノムの制限酵素切断パターンを比較検討することで分離株間の分類が可能な領域をいくつか決定した。 3) HHV-8:タイ国HIV感染者におけるHHV-8感染率、HIV合併症との関連性を明らかにする目的で、血清疫学を施行した。その結果、皮膚疾患を伴うHIV感染者の抗HHV-8抗体陽性率は皮膚疾患を伴わないHIV感染者に比し高値を示すことが明らかになった(Ayuthaya.PI.et.al.,Arch.Virol.1998 143:1881-92)。 これら研究成果に基づき、HIV感染者におけるヘルペスウイルスの動態、病原性を含むウイルス学的特性を詳細に検討する研究基盤の整備を遂行中である。
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