研究概要 |
本研究では、主にタイ国におけるHIVキャリアーと非キャリアーにおけるヒトヘルペス6、7、8(HHV6、HHV7、HHV8)の感染動態について解析した。このうちHHV6の感染動態で興味深い知見が得られた(J.Infect.Dis.180:50-55,1999)。1)HIV陽性の母親から生まれた症例227例について生後6カ月および12カ月におけるHHV6の累積感染率を解析したが、HIV陽性となった子供ではそれぞれ11%および33%であったのに対して、HIV陰性であった子供ではそれぞれ28%および78%であった。またHHV6感染以前のCD4数がHHV6感染と相関していた。このことはHIVの感染動態が後のHHV6の感染に影響を与えるという意味で極めて興味深い。今後、HHV6サブタイプによる影響、HHV6陽性者におけるHIV感染におけるHIV感染の状況等の詳細な解析が期待される。 HHV8に関してタイ国におけるHIV陽性/陰性者で皮膚病変について,抗HHV8抗体陽性率を検討した(Arch.Virol.143:1881-1892、1998)。HHV8が潜伏感染しているprimary effusion lymphoma(PEL)細胞(BCBL1、BC3)をもちいたIFAにより調べられた。HIV感染者において痒疹性丘疹、乾癬でそれぞれやく25%に何らかの抗HHV8抗体を有することが明らかになり、皮膚病変をもたないHIV陽性患者より優位に陽性率が高いことが判明した。このことは感染経路等を考える際に有用な情報であると思われた。またタイ国におけるHHV8浸淫率を大きな母集団(500〜1000人)での大規模調査がHIV陰性及び陽性者について進行中である。抗HHV8抗体は特に構造遺伝子についてEBVと交差することが指摘されているが、我々の研究室で発現させているHHV8に特異的な抗原を用いたウエスタンプロット法、EUSAなどによりさらにどのような抗原を認識しているのかを追跡中である。稲城らによるHHV8のK9遺伝子産物に対する特異的なモノクローナル抗体の作製とK9遺伝子産物の解析(J.Hum.Virol.2:63-71、1999)もこういったことに有用であると思われた。
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