研究課題
食塩摂取量が日本人とほとんど変わらないのに、高血圧者がほとんどいないことの要因の一つとして、民族的に食塩非感受性の可能性が否定できない。そこで本調査隊では当初、食塩感受性に関する研究として、臨床疫学介入研究を計画していたが、対象者の選択や、常食の倍量近い食塩負荷の困難性、対象者に研究の意義と方法を理解させることの困難性などから、精度や信頼性の高い研究の継続が極めて難しいことが明らかとなった。そのため、食塩負荷による介入研究を断念せざるを得なくなった。そこで今年度は研究方針を一部変更して、分子生物学的手法(アンジオテンシン変換酵素遺伝子多型の検出)を用いて遺伝学的特性を比較検討することにより、食塩感受性に関する研究を行った。1998年2月12日、15日および17日の3班にわかれてネパール入りして、調査の準備を整えた。調査地区は、Kathmandu周辺の都市近郊農村Bhadrakali村、Kabhrepalanchok DistrictのKotyang村(約200名)ならびにMahadavstan村Judigaun集落(約100名)である。それぞれの地区で対象者の血漿から白血球部分をNunc tubeに採取して液体窒素中に冷凍保存した。また、上記の研究と並行して行ったその他の調査研究として、(1)Helicobacter pyloriに関する飲料水調査、(2)マラリア抵抗因子に関する研究、(3)200名以上の対象者から便を採取して実施した寄生虫症に関する形態ならびに免疫学的調査、(4)動物性たんぱく質摂取の極めて少ないKotyang住民において、食事、尿、便を採取して行った窒素出納実験、の4研究を実施した。最終班の帰国は3月15日であり、それ以降にデータを分析する。従って、平成9年度の研究成果の報告は次年度に繰り越さざるを得ない。