研究課題
国際学術研究
本研究では、これまで EB ウイルス関連胃癌の充分な調査が行われていない南米、北米、ユーラシア大陸の中で信頼に足る胃癌の罹患率または死亡率が得られている地域を中心に対象国を選び、EB ウイルス関連胃癌の疫学的、病理学的、ウイルス学的特徴を明らかにしようとするものである。今年度までに調査収集された胃がん症例は、コロンビア 95 例、メキシコ 135 例、チリ 143 例、中国 265 例、マレーシア 86 例、インド 115 例、ロシア 52 例、ウズベキスタン 172 例である。すべての症例について in situ hybridization による Epstein-Barr virus encoded small RNA(EBER)の同定を完了した。いずれの地域でも女性よりも男性の胃癌症例において EB ウイルス陽性胃癌の占める割合が大きく、特にアジア地域、ウズベキスタンでその傾向が強く認められる。一方、ロシアや北・南米の地域ではその性比が小さい。さらに胃癌の発生部位別に EB ウイルス陽性胃癌の分布を比較すると、日本、コロンビアの男性、メキシコの女性などいくつかの例外はあるものの、多くの地域では EB ウイルス陽性胃癌の占める割合が最も高い部位は噴門部であり、続いて胃体部、幽門部の順となっている。地域差に関しては、女性の胃体部の胃癌において若干の地域差を認めたもののその他の性・がんの発生部位別では明らかな地域差は認めなかった。いずれの地域においても男性において EB ウイルス関連胃癌の占める割合が高く、さらに噴門部に発生した胃癌の中で多いという傾向を示していることから、喫煙習慣などの男女で異なる生活歴が EB ウイルス関連胃癌の発生段階で関与している可能性が考えられる。
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