研究分担者 |
佐々木 史郎 国立民族学博物館, 第4研究部, 助教授 (70178648)
佐藤 宏之 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (50292743)
大貫 静夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70169184)
浅川 滋男 奈良国立文化財研究所, 主任研究官 (90183730)
風間 伸次郎 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50243374)
|
研究概要 |
この3年間の調査を通して多くの成果を挙げることができた。集落の分布,位置,規模,立地,季節移動の実態に関して,踏査・聞き取り調査・文献調査などを通して精度の高い情報を得ている。集落の分布と位置に関しては数〜十数キロほどの間を置きながら,漁撈・狩猟の好適地に位置することが確認できた。規模は小さく,10を越える家を含む集落はごく少数であったこと,人数も50を越えるところは多くはないことも確認できている。立地は川から近いところにあり,それは漁場と密接な関連をもっていることが確かめられた。季節移動に関しては,冬の恒常的な家は川からさほど遠くない木立の中にあるのが一般的であり,夏の漁撈小屋は河畔に作られるのが通常であったこともわかった。近距離の地点に両者が設けられていたことは間違いがない。 ナナイ,ウリチ,ウデヘの狩猟と漁撈の暦も復元することができた。特徴的なのは季節ごとに各種の資源を対象にした狩猟と漁撈とを巧みに織り混ぜているところにある。これは調査した地点すべてに共通している。各地点は自然環境も違い,民族の文化伝統も異なる。しかし,生活の基本的なところでは多くの共通した側面をもっている。漁具や狩猟具,漁法や狩猟法にも共通する面が多い。住居の構造,冬季の必需品である暖房装置,あるいは町並みなども外見は完全にロシア風になっている。だが,その利用の仕方,細部の構造などには古来の伝統に則ったものが見られる。狩猟領域とその所有形態に関しても自然集落の時期の伝統が残っている。その規模に関しては,世界の各地の民族誌や考古資料から推定されている領域,約3万ヘクタールにほぼ近い。 以上のように,ロシア極東地域の少数民族の生活に関する種々の面の詳細な情報が得られている。特に重要なのは,アムール川流域の人々の生活の基盤がサケの漁撈にあったことを改めて確認した点にある。
|