研究課題
国際学術研究
1.派遣に関する研究実績:フンボルト(ベルリン)大学における共同討論では、最近のジェンダー研究の現状と問題点の総括がなされ、特にジェンダー理論における構成主義と実体主義の対立が、文化比較の次元においても重要な帰結を持つことが確認された。文化単位が特性の国家領域・民族の実体と同一化する過程と、ジェンダー的差異が生物学的差と結びつけられて実体化されて把握される過程とがともに、近代国家制度の整備過程において殊に顕著に見られる点に着目しつつ分析する方針を定めた。各担当テーマに関しては、ブコヴィナ地方における「多文化主義」と「母語」「故郷」観の問題点(藤田)、ロマン主義におけるジェンダー・イメージの特性(中井)、ナチス抵抗運動における「母-娘」関係の分析(村上)、ナショナリズムとジェンダーイメージの特性(大貫)に関して資料収集と調査を行った。その結果は、2月の合同会議で発表された。招聘による合同会議における成果:韓国側研究者からは、1920年代における日本経由のモダニズム移入の現象の分析、神話のモティーフの近代における組み替えに見られるジェンダー・イメージ、および文学を媒体とする女性の性的役割の固定化に関する報告がなされた。また、中国、台湾からの研究協力者の参加を得たことによって、東アジアの近代化の時期的ずれ、政治体制の相違が、ジェンダー・イメージの相違に強く影響していることが確認された。今後の研究の方針として、(1)近代における神話モティーフの再興、(2)旅行記に見られるオリエンタリズム、(3)多文化意識と母語意識、(4)1920年代のモダニズムの移入とそれに対する反応、の4点に関してワーキング・グループ単位で分析を進めることになった。また異文化接触によってもたらされるイントラ・カルチュラルな側面の分析のために、“transculturation"の概念を共通の分析基軸とすることにした。
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