研究課題/領域番号 |
09044010
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大貫 敦子 学習院大学, 文学部, 教授 (70176957)
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研究分担者 |
松永 美穂 早稲田大学, 第一文学部, 助教授 (30199822)
藤田 恭子 東北大学, 言語文化部, 助教授 (80241561)
村上 公子 富山国際大学, 人文学部, 助教授 (20239487)
田辺 玲子 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80188367)
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キーワード | ジェンダ-・スタディ-ズ / カラチュラル・スタディ-ズ / 近代化 / 異文化接触 / 文化的差異意識 / transculturation |
研究概要 |
今年度は、これまでのプロジェクトの成果に基づき、文化的異質感が感知される状況をおもに以下の3つの次元に分類して、それぞれをジェンダ-・バイアスとの関連で分析する試みがなされた。 1)自発的動機に基づく異文化接触(啓蒙期の世界航海、および19世紀末における脱ヨ-ロッパ願望に基づくアジア旅行に見られる異文化経験) 2)移民・占領などによる強制的な異文化接触(ナチス期における亡命者、日本植民地下の東アジア) 3)一文化内における異文化体験(階層、出身地、ジェンダ-差異による文化的差異意識)。 しかも、それぞれ3つの次元において、ジェンダ-・イメ-ジの共通性が次の点で見られることが分析から明らかになった。(1)自発的動機に基づく異文化体験の場合、他者性は女性性のジェンダ-・イメ-ジに置き換えられることが多い、(2)強制的な異文化体験の場合、支配者側は被支配者文化に女性性のジェンダ-付与を行う。しかし被支配者側には支配者文化に同化されない別様の対抗的文化的差異意識が形成される、(3)一文化内における異文化体験においては、その都度の政治的ヘゲモニ-によって、ジェンダ-・イメ-ジは可変的である。異文化接触は、旧来の性的役割分担を流動化する場合と、逆に伝統の再活性化による固定化という二つの逆方向の反応を引き起こす。 以上の分析結果から、文化的差異意識の発生は多層的・多元的な文化的ヘゲモニ-と関連していること、またそれゆえに文化的差異というものが地域や国家領域といった恒常的係数によって規定しえないことが明らかにされた。
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