研究概要 |
これまで『デイ-ガ・ニカーヤ』と『ジャータカ』等を含め、初期仏教文献の重要な原典テキストはパーリ文献協会(PTS,オックスフォード)より計画的に発行され、研究者に多大の便宜を供してきた。しかしながら、これらの原典テキストには語彙索引が殆ど付されていないのが現実であり、付されている場合でも不完全で誤りが多く、完全な語彙索引が研究者に切望されている。特に,『ディーガ・ニカーヤ』と『ジャータカ』は、作品の重要性・韻文と散文が混淆していることから、辞書編纂には最重要作品であるにもかかわらず、完全な語彙索引が欠けている。このために、新『パ英辞典』の編纂等の重要な研究の完成が遅れている。 本年度は、『ディーガ・ニカーヤ』を処理し、語彙索引作成を実行した。テキストスタイルの独自性に注意し、自作の索引プログラムを微調整しながらテキストを処理し、索引の出力結果を参照しながら、省略文字等の最終チェックをした。研究は順調に進行し、完全な語彙索引をPTSから1997年10月に出版できた。副産物として、原典テキストのミスプリント等の種々のエラーを修正したより精密なテキストを最終的に作成できた。これらの研究過程で得られた、重要な知見を論文、「PTS版テキストの限界-『ディーガ・ニカーヤ』を中心に-」にまとめた。又、重要なテキストTheragathaとTherigathaの詩脚の正順と逆順索引を出版した。 又、従来の研究成果・作成したテキスト・電子ブック等のデータをホーム頁にて公開した。特に電子ブックに掲載の韻律解析結果は非常に貴重なものであり、研究の成果・手法等のすべてを公開したことと同じあるが、当該分野の研究推進のために敢えて公表した。
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