研究概要 |
調査対象地のジャワ島スメル火山南麓のマジャングテンガ村は,原自然条件に規定され,常夏乾湿の気候の下に,玄武岩母岩,緩傾斜の火山圧土堆積台地にある。この物理性,化学性に良好な褐色火山灰土壌をベースに,生命体すなわち微生物,植物,動物の相互作用が安定,発展し固有の原自然を形成し,その基軸は自然多層混雑林となる。この自然の土地を,150年昔の入植を契機に,社会的投資により人為の土地に転換し,クラジャン,ケダウン,ランバンクニングの旧村をつくりあげている。人為の土地は,グカランガン,水田,畑に区分され,全旧村はグカランガンを定住屋敷地として,生活拠点にし,水利のため前2者の旧村が水田,後者が畑に比重が高い土地利用を経験則により形成,維持,発展させてきている。固有の原自然に適応して,きわめて強固な慣行システムがある。均分相続システムをベースにグカランガンが造成されている。パオンシステムにより水稲収穫が共同でされ,バジャクシステムにより刈分けをベースに農地の管理,利用がされている。近代化過程においても,これらの慣行に反する農業技術体系は現地に普及できない。この意味で,労働対象革新技術体系は現地に普及可能であり,事実,改良品種,化学肥料,農薬をベースとする技術体系は,公共投資をベースに,全般的に普及,生産力の向上を実現している。しかしながら,この結果現地には土壌の劣化,生産力の停滞が畑,水田利用に生じている。この解決のために,都市生ゴミ,精糖工場残滓,稲ワラをベースに,ブカランガンにおいてコンポストをつくり,サトウキビ・トウモロコシ畑,コーヒー園の試験圃場に施用,PH値の適正化,産物の増収など有効な実験結果を入手した。さらに水田においても,現地大学等の協力により,コンポスト施用実験を拡充してきている。
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