研究概要 |
ジャワ島農村・農業の基本的課題である地力低下の解決のために,コンポストの傾斜サトウキビ畑施用現地実証試験を行い,この結果に基づいて,村是への接近をはかり,協同組合の役割を示した. 調査,試験対象地マジャングテン村は,自然多層混淆林をプカランガン(屋敷地),水田,畑地に転換し,土地利用を行っているが,これらの土地別圃場のpH値を調べると,プカランガン,水田は略々正常値を示すが,傾斜畑地は著しく土壌の酸性化がすすみ,pH値が4.0を切る圃場も生じていた.現地の土地利用は,水田の水稲,プカランガンの果物,薬草,畑地のサトウキビを基本としている.サトウキビは旧来,水田に導入されていたが,グリーン リボリューションにより,多収穫水稲品種が普及され,サトウキビは傾斜地畑地の商品作として,畑地の拡大を伴いながら,化学肥料施用をベースに普及されていった. 旧来の畑地利用は,プカランガン内部で飼用される家畜排泄物を穴の中に一年間体積し,コンポストとして施用,地力維持をはかっていた. この慣行的地力維持機構では,傾斜サトウキビ畑地の拡大に適応することができず,化学肥料施用に依存するために,土壌劣化,収量低下が顕在化していた.この解決のために,精糖工場残滓,イナワラ,生ゴミをベースに,米ヌカ,化学肥料を窒素源として良質完熟コンポストを現地長老の助力を得て50日で作成,スポット的現地実証試験を行い,化学肥料施用の対照区と比べて,1年目2.2倍,2年目2.4倍の収量をあげ,また試験圃場区のpH値も,6.5〜7.0と著しく改良された. 現地は,地力維持の必要性は慣行的経験則により理解しているので,コンポストの革新技術に抵抗がなく,定着社会の慣行と矛盾せず,定着社会の生産力水準をトータルとして向上させうる.このために,村当局,協同組合が公共的事業として推進していくことが可能であることを村是として示した.
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